24日のクリスマスイブにどんなケーキで子供を喜ばせようかと思案している親は多いに違いない。
現在のように、居ながらにして世界のあらゆる国のクリスマスケーキが買える時代と違って、少なくとも東京では1950年代から、かなり長い間、不二家のショートケーキが代表的なものであったように思う。
スポンジケーキを土台に白い生クリームでおおわれ、赤いイチゴで飾られたショートケーキは、日本人に最も親しまれてきたケーキの一つであったに違いない。だが、このスタイルのショートケーキは日本のものであって、イタリアを含む欧米諸国に存在しないのは、日本人には不思議な思いがする。
イタリアのクリスマスの菓子の代表的なものは、パン菓子「パネットーネ」だ。昔は円筒形で最近はやや背が低くなったが、外見も味もいたってシンプルなパン菓子である。
これは一説によると、1400年代後期にミラノ大公スフォルツァ家の食卓を飾ったものが元祖だというから、イタリア人は数百年間飽きずに食べてきたことになる。
だが、最近は、さすがに若者には人気がなく、クリスマスシーズンが終わると、バーゲン商品の一つに成り下がってしまう。
坂本鉄男
(12月22日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)